福井地方裁判所 平成3年(わ)107号 判決 1991年10月18日
本店所在地
福井県武生市葛岡町五号四番地
ポリマー化成株式会社
(右代表者代表取締役 塚﨑勲)
本籍並びに住居
同県同市同町三号一八番地
会社役員
塚﨑勲
昭和一五年九月二八日生
右の者に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官片山巌出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人ポリマー化成株式会社を罰金一五〇〇万円に、被告人塚﨑勲を懲役一〇月にそれぞれ処する。
被告人塚﨑勲に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人ポリマー化成株式会社(昭和六三年七月一九日変更前の商号「ポリマー化成工業株式会社」。以下「被告会社という。)は、肩書地に本店を置き、各種合成樹脂及び同製品の製造加工並びに販売等を目的とする資本金五〇〇〇万円(昭和六二年一〇月二九日増資前の資本金三五〇〇万円)の株式会社であり、被告人塚﨑勲(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していた者であるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入れの計上、期末材料棚卸しの一部除外、さらに減価償却費の繰り上げ計上などの方法により所得の一部を秘匿した上、昭和六一年七月一日から同六二年六月二〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一億九二一八万二四九八円であったにもかかわらず、同年八月一九日、福井県武生市中央一丁目六番一二号所在の所轄武生税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四九八一万八九七七円であり、これに対する法人税額が一五七六万七三〇〇円である旨の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額七五五四万三五〇〇円と右申告税額との差額五九七七万六二〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書一二通
一 宇佐見和義(五通)、国嶋正雄(三通)、中山幸子(三通)、岩壁肇、安井秀昭(二通)、生駒誠(二通)、山崎元、藤村義一、美村信之、中原保、勘場稔、松浦剛(平成二年一二月一四日付け)の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の査察官調査書一五通
一 大蔵事務官作成の証明書四通(検察官請求番号2、3、6、7)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書
一 福井地方法務局武生支局登記官作成の法人登記簿謄本
(法令の適用)
判示の所為は、被告人については法人税法一五九条一項に、被告会社については同法一六四条一項、一五九条一項にそれぞれ該当するところ、被告会社について情状により同法一五九条二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択することとし、被告会社についてはその金額の範囲内で罰金一五〇〇万円に、被告人についてはその所定刑期の範囲内で懲役一〇月にそれぞれ処し、被告人に対しては刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
(量刑の理由)
被告人は、その経営努力によって、昭和六一年ころから被告会社の業績が飛躍的に伸び、正しい納税申告をすると一時に多額の税金を納めなければならなくなり、被告会社に自由な資金が残らなくなることから、架空仕入れの計上、棚卸除外、減価償却費の繰り上げ計上等多岐にわたる不正な所得隠しの方法を駆使して、被告会社の利益を過少に申告して法人税を免れようと企図し、これを実行したものであるが、その態様は計画的で、手口も巧妙であって悪質であり、そのほ脱率も高く、ほ脱税額も高額であるうえ、その後の事業年度分の法人税申告の際も、本件と同様の不正な申告を行っていた節が窺えることをも考えると、被告人の刑責は、その放縦な経営態度に対する責任とともに重く、被告会社の公的存在としての義務の不履行ともども軽視しえない。
しかしながら、他面、被告会社は、その後修正申告を行って正規の税額の相当部分の納税を済ませ、本件についての反省から、経営コンサルタント会社に被告会社の経理事務について改善方策の立案を依頼するなど、不祥事の再発防止を組織的な面から検討しており、また被告人については前科はなく、経営者として至らなかったことに対する反省も顕著であって、再犯のおそれは乏しいものと考えられることなどそれぞれに有利な情状も存するので、以上の各事情を総合考慮し、被告会社及び被告人に対し、主文のとおりそれぞれ刑を量定するとともに、なお被告人については社会内にあってより反省を深めることが相当であると認め、その刑の執行を猶予することとした。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 大西良孝)